味いちもんめ(11)
鬼怒川温泉のホテル「酔心館」は老舗だが、現在は板前の質が悪く、宿の評判は悪くなるばかり。
とうとう、その女将が友人である『藤村』の女将に助けを求めてきた。
そこで、伊橋がその助人として選ばれ、その板場に入る。
想像以上にひどい板場の状態を目のあたりにして、伊橋は頭を抱えてしまう。
そして、板前達がいっせいに辞めてしまう非常事態が発生する。
『藤村』の馴染みの客・松田が、味噌汁を三杯もお替わりした。
塩分の取り過ぎだと心配する坂巻に、松田は「家では飲めないもんだから…」と言う。
というのも、松田は結婚前に相手から「結婚しても仕事を続けたいので、料理にはあまり手をかけられない」と言われたのを承諾して結婚したからだ。
今更、妻に朝食に味噌汁が飲みたいと言えないでいる松田に、伊橋が悪知恵をつけるのだが…。
茅ケ崎にある兄の家に向かう電車の中で伊橋は、昔のサーフィン仲間・田村に出会う。
これから後輩達にサーフィンを教えにいくところだという田村達に、伊橋は兄の家で夕食を振るまう約束して別れる。
その夕食の用意をしていた伊橋の元に、田村が飛び込んで来た。
サーフィンを教えていた後輩の女の子が沖に流されて、行方不明になってしまったというのだ。
『藤村』の社員旅行で出会ったのが縁となり、今は熊野の口利きで東京のレストランに入って修業しているコック志望の青年・孝夫。
その孝夫から伊橋は、故郷へ帰ろうかと思っていると打ち明けられた。
理由は、新潟で一人で暮らしているバアちゃんが軽い脳溢血で倒れたのが心配なためだという。
これを聞いた伊橋は「それでは、逆にバアちゃんを東京に呼べばいいのではないか」と提案するが…。
熊野の一人娘・エミには、今結婚を考えている相手がいる。
しかし、熊野はその相手にどうしても会ってくれない。
何とか父親を説得して欲しいと相談された伊橋だが名案が浮かばない。
相談を受けた数日後、伊橋は『藤村』の常連・円鶴師匠に「嫁菜飯」を出したところ、他のに変えてくれと言われる。
師匠は、「嫁菜」という名が辛い思い出を呼び起こすからだと話し始める。
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